二階の自分の部屋に行く途中、お姉ちゃんの部屋のドアが開いてて、ベッドで雑誌を見てるお姉ちゃんが見えた。


「お姉ちゃん、明日のコンクール応援に来るんでしょ?10時からだからね」

嶌田部長から聞いてるだろうけど、念のためにと軽い気持ちで言ったんだ。

なのに、おねえちゃんの顔が少し強張った。


「お姉ちゃん?」

一歩部屋に入った時、机の上に寂しそうに置かれてるクローバーのネックレスに気づいた。


お姉ちゃんがいつも付けてた嶌田部長からのプレゼント。



「私、行かないよ。啓介と別れたから」

雑誌に目を向けたまま話すお姉ちゃんの顔を見た。


「どうして?どうして別れたの?」


あんなに仲良かったのに…。

嶌田部長と学校に行くようになってから、お姉ちゃんは早起きをして鏡を見ている時間が長くなった。

鼻歌を歌って嶌田部長が迎えに来るのを待ってたのに…。


「啓介、学校の先生になるために東京の大学に行くんだって。私遠距離なんていやだもん」


淡々と話すお姉ちゃんの顔が、雑誌で隠されて見えなくなった。


遠距離になるから別れたの?

好きなのに一緒にいられる時間を離れて過ごすの?


私には理解できない。


「本当にそれでいいの?」

「これでいいの!!
あんた、明日早いんでしょ?もう寝なさい!」


自分に言い聞かせるようにこれでいいと言ったお姉ちゃん…。

私は何も言えず、黙って部屋を出た。