2泊3日の合宿を終えて帰ろうとすると、遼ちゃんの大きな声が音楽室に響いた。

「葵、一緒に帰ろう!」

私の肩に掛けていた大きな荷物をヒョイと持ち上げ、遼ちゃんがニコって笑った。


やっぱり、夢じゃなかったんだ…。

いつも背中ばかり見ていた遼ちゃんが隣にいる。

私、すごく幸せだよ。



「葵の荷物重いな~、何入ってんだ?」

「遼ちゃんの荷物が軽いだけだよ。女の子は色々と必要なものがあるの!」


荷物の比べっこをしてる私たちは、嶌田部長に声をかけられてようやく周りの視線に気づいた。


「おまえたち、付き合ってるの?」

目がテンになってる嶌田部長と、答えを待ってるみんなの大きな目。

急に恥ずかしくなって顔が赤くなった。


「うん。俺達付き合ってるから!」

遼ちゃんが私の肩を引き寄せて、笑顔でみんなに答えた。


私はさらに顔が熱くなって茹でタコ状態。

そんな私の顔を、遼ちゃんは嬉しそうに覗き込んだ。


「大丈夫?葵、顔真っ赤だよ」


大丈夫なわけないでしょ!

遼ちゃんのせいだよ。

みんなの前で肩寄せたり、付き合ってるって宣言したり…。

顔が赤いって言われると、よけい赤くなるじゃない!


「も~~、大丈夫じゃないよぉ!」

遼ちゃんの胸を思いっきり叩いた。

「なんだよ!何が大丈夫じゃないんだ?」

鈍感な遼ちゃんはさらに私の顔を覗き込み、私は背中を向けた。


本当は嬉しくて嬉しくてたまらなかった。

赤い顔がにやけそうになって、必死で顔を隠したんだ。