「もう一度言って…」

遼ちゃんが私に言った。


「嬉しいって…?」

「違う…、もう一度俺のこと呼んで…葵」



『葵』って呼ばれた。


8年ぶりに名前を呼ばれて胸が高鳴る。



私の心はずっと待っていたんだね。

その声で呼ばれることを…。




「遼ちゃん…?」


なんだか恥ずかしくなり語尾を上げちゃった。



赤くなった私を遼ちゃんがギュッと抱きしめた。


「もう‥呼んでもらえないと思ってたから…」



私も、もう二度と呼ぶことはないと思ってた。




これからは、何度でも呼ぶよ


……遼ちゃん。




遼ちゃんを抱きしめながら、何度も心の中で名前を呼んだ。



「一回目はバカって言われたけどね?」

遼ちゃんが急に私の顔を覗き込んだ。


「ご…ごめんね。本当は好きって言うつもりだったの」

「ホントに~?」


遼ちゃんは面白がってわさらに顔を覗き込む。



「本当だよ!」

そう言った瞬間、遼ちゃんの瞳が急に優しくなった。