「母さんが家を出て行く時、何度も行かないでって言ったんだ…。
だけど、振り向きもしないで俺と父さんを置いて出て行った」


今にも途切れそうな弱々しい声…。

遼ちゃんの肩が小さく震えてる。


「母さんに会いたくて、寂しくて毎日泣いてた。泣き疲れた時、母さんなんてこの世からいなくなればいいって思ったんだ…。俺…朝が来るたびそう思ってた。

そしたら……本当にいなくなっちゃった。

末期の癌で、気づいた時にはもう手遅れの状態だった。

俺があんなことを思ってたから、ずっと恨んでたから…母さんは幸せになれないまま死んだんだ…」




溢れそうになる涙を瞳に溜めて、遼ちゃんは話してくれた。


寂しくて、苦しくて、悲しい思いを

最後まで話してくれた。



私は、そっと遼ちゃんを抱きしめた。


「遼ちゃんが殺したんじゃないよ。お母さんのこと好きだったんでしょ?だからこんなに苦しいんだよ」





神様



どうか遼ちゃんの苦しみを

私にください。



憎しみや悲しみは

愛がなきゃ生まれませんよね?



遼ちゃんの愛を

お母さんに伝えてください。



お母さんの愛を

遼ちゃんに届けてください。