「こいつ、俺の後輩なんだ」

笑って話してる遼ちゃんの顔の後ろで、


遼ちゃんの左手は、

震える私の手を力強く自分に引き寄せた。


「後輩?じゃあ丁度いいじゃん。ちょっと貸してよ」


「うん、だからね… 

俺の後輩に手だすな」


聞いたことのない遼ちゃんの声が廊下に響いた。

低くて、冷たい声。


遼ちゃんはどんな顔をしてるんだろう。

さっきまで笑ってた男の人の顔が急に強張った顔になった。


「てめえ…」

しゃがんでた男の人が遼ちゃんに掴みかかろうとした時、赤いシャツの人が止めに入った。


「やめとけ!こいつはやばい…」


渋々手を引っ込めて、男の人たちは体育館の方へ歩いて行った。



男達の姿が見えなくなっても、冷たい空気が残ってるのを感じる。


今の…なに?


なんだったの……。



震えが止まらない。


あの男の人が言った「やばい」ってなに?


遼ちゃんのこと?