「おせぇよ」



聞こえた…


何度も呼んだ遼ちゃんの声…。



半ベソをかいてる私の目に、遼ちゃんが映った。



遼ちゃん!!



私を掴んだ手の力が抜けた瞬間、とっさに逃げ出し遼ちゃんの陰に隠れた。


「おまえ、俺たちを待たせすぎ」

「だって…」


遼ちゃんはいつもの遼ちゃんで、平然としてる。


そんな遼ちゃんに赤いシャツの男の人が話しかけた。


「遼…?やっぱり遼だよなぁ!」


親しそうに遼ちゃんの肩に腕を回し、笑いかけてる。


遼ちゃん、この人と知り合いなの?


「久しぶりだな」

「遼、ここの学校だったのか」

「ああ」


なんだか和気あいあいって感じになってない?

私、怖くてまだ震えてるのに…。


「俺達、暇しててこの子にちょっと付き合ってもらおうとしてたんだ」


やだ!!

男の人の手が私の肩に触れようとした時、反射的に目をギュっとつぶった。


触れられたはずの肩が何も感じず、そっと目を開くと

遼ちゃんの右手が男の手を掴んで阻止してた。