舞か終わったあとの歓声はとても凄かった。


そして、私の疲労も凄かった。



三味線弾きながら歌うのって、こ、こんなに、辛いのか・・・!!


顔では笑顔を作ってはいるが、内心ではぜぇはぁ息切れしていた。


「うむ、主の渾身の舞、しかと見届けたぞ。」



上座から、徳利を片手に芹沢さんがそう言った。


な、なんて上から目線。
これほどまでの傲慢さに目眩がしてくる。


どれ程上から目線だろうと、舞をまった女郎は頭を下げながらお礼の言葉を述べた。


「さて・・・桜とやら。儂に酌をしてもらうか。」


「・・・(にこり)」


そこで、まさかまさかでそう言われた。
急なことで心の準備が出来ておらず、にこりと微笑むことしかできなかった。


・・・今の笑顔はひきつっていなかっただろうか。



三味線をおいて、立ち上がる。
もちろん、芹沢さんにお酌をするためだ。


立ち上がって歩き始めたそのときだ。


沖田さんが、私の前を通って芹沢さんの前に座ったのは。



「芹沢さん、どうですか?」



芹沢さんはいきなり沖田さんの急なお酌にも顔を変えず、徳利を差し出した。

「いただこうか」




「どうぞ」




よほど機嫌が良いのか
静かに、沖田さんからお酌してもらったお酒を飲んでいた。




「珍しいな、沖田くんから酌してくれるなんて」



「いえいえ。
 いつも芹沢さんはお疲れのようですし」



沖田さんの瞳からは
いつも沖田さんが隊士たちに見せる冷淡な眼差しは消えていた。

それだけでも驚きなのに、
芹沢さんに向かって微笑んでいる。



二人の雰囲気に
その場にいる隊士たちの雰囲気が和らいだ。



けれど、私だけは嫌な予感がしていた。




そして、その予感は当たった。





「くっ・・・」



「芹沢さん?!」




芹沢さんがいきなり胸のあたりを抑えて呻き始めた。


すぐ隣にいた新美さんが慌てたように駆け寄った。




芹沢さんはそれを手で制した。