夢を見た………。



辺りは真っ暗。

ただ自分だけが光って見えるだけ。

前も後ろも、右も左も分からない。



けど、1つだけ分かることがあった。

背後から聞こえる、コツコツと地面を叩く足音。

だんだん大きくなるってことは、近づいてきているのだろう。


普段なら特に気にしないのに、今はすごく怖い。

そっと後ろを振り返ると、足の爪先が見えた。



逃げなきゃ…!



なぜかそう思って、

気付いた時にはもう、足が勝手に動いていた。



走っても、走ってもゴールは見えない。

相変わらず足音は、速度を変えずに近づいてくる。


「やだ…誰か!!」


「誰か助けて…っ!」


闇雲に走りながら叫んだその声は、

虚しく空気に溶けた。



“お前が悪いんだ”


どこからか声が聞こえる。


“お前の居場所はない”


“全ての原因は、お前”


同じ声で、何度も何度も言ってくる。


“お前が悪いんだ”

“あの時、行かなければよかったのに”

“全ての原因はお前だ”


「やめてよ……知らない。私そんなの知らない!!」


頭の中で木霊(こだま)する声。


首を勢いよく振って耳を塞いでも、頭に直接響く。


「っ…ひっく……何、なのよ…」


そのままぺたん、と力なく座りこんで、涙を流した。


冷たくて暗い世界。

苦しくて、悲しくて。

次々と涙が溢れた。


「…誰か…返事してよ……」


ひとりは嫌。

「結城くん……っ」


ふと、誰かが頭を優しく撫でてくれた。


“大丈夫……”


“……もう、ひとりにしないから…”


優しく響くその人の声は、とても心地よくて。

声のするほうを見上げたけど、ただ暗い空間しか見えなかった。


けど、涙はいつの間にか止まっていた。


私は目尻に残っていた涙を拭うと、微笑んで。


「ありがとう」


そう呟いた。