時は昔、暗闇に包まれた江戸の町。 午後10時。 新撰組頓所前に、奴は座っていた。 深く被った編み笠、胡座をかいた左手に置かれた大きな風呂敷、正面のはだけた着物からは、鎖骨下まで巻いたさらしが見えた。 物音ひとつしない暗闇のなかで"奴"は、微動だにせず座って、そうーーー ただ座って、何かをまっていた。