それからどれくらい歩いたんだろう。


辺りはずっと木ばかりで、全く町が見えない。


けれど空は明るくなってきて、カラスの鳴き声が聞こえるから、朝方というのはわかる。
視界がよくなっただけありがたい。


「心配…してるだろうな…」


平助は…してないかもしれないけど…。


ズキッと胸が痛む。


平助に嫌われたら辛いなぁ。


「このまま現代に帰れたらいいのに…」


まあ、向こうに帰ったら帰ったで、私の居場所はないんだけど。


「お地蔵さま、今日もこの京を見守って下さいね」


ー!!


人の声!?


そっと近づき草むらから覗くと、おばあさんがお地蔵さまにお供えをしていた。


そして、そこから少し離れたところに微かだけど建物が見える。町だ。


やっと帰って来れた…。