「いえ、あたしもあの時のお礼をちゃんと言えてなかったので」 「別にいいよ、当然の事をしただけだからね」 「本当にありがとうございました」 「いいよいいよ、頭を上げて」 ゆっくりと上げると佐野さんと視線がぶつかった。 「でも一度君と食事をしてみたいって思ってたんだ」 ホッとしたような笑顔に何処か可愛さを覚える。 そうか、きっと世の女性は彼のこんなところにキュンとくるんだろうな。 そりゃあ誰だってそんな目でそんな事言われたらすぐに恋しちゃうよね。 あたしはそんな事はないけれども。