甘くて切なくて、愛おしくて




参った、というべきなんだろうか。



「乾杯」




佐野さんが傾けたグラスに自分もグラスを持ち上げ、同じ高さまでくっつける。

チンと可愛く重なる音が響き、お互いグラスを離した。


シャンパンの泡が光に当たってキラキラ輝いている。

それを見て一口飲むと口の中で優しくしゅわしゅわと解け、喉元を通り過ぎて行った。



「よかった、本当は断られるんじゃないかって思ったんだ」





一口飲んだ沢城さんが満面の笑顔であたしを見つめながら話をする。

本当は今日はまっすぐ帰る予定だったのだが、佐野さんから急に食事に誘われてしまった。
断ろうと思ったけれども、簡単に行けないとは言えなかった。