甘くて切なくて、愛おしくて



佐野さんは今海外の仕事も手掛けていて、
現地視察のためニューヨークに出張中なのだ。
だから話をしようにも出来ない。




「そうなのよね~ったく肝心な時にいないんだから、あの人」



なんかさっきから佐野さんの悪口ばかり言ってない?



「ま、帰ってからって事になるわね。それか..沢城さんに勇気を出して
聞いてみる、とか」


「あ、あのねぇ!さっき美香子も言ってたじゃない!沢城さんには聞きにくいでよって」


「そうだけどさ~~何とかしたいなら何か行動に移さないと」


「でも..そんなの、出来ないよ」




だって、普通に話せる状態ならば軽く聞けるかもしれないけれど。今のこの状態で、嫌われてるかもしれないって思ってるのにそれ以上に気になってるとはいえ、沢城さんに聞く、なんて..


「あんたがいつまでもその状態ならそれはそれでいいのよ~」



面白そうに提案する友人にだんだん腹が立ってくる。



だけれど、悔しいけれどもそれもまた事実なのだ。
聞かなければ、知らなければ何も始まらないし、解決のしようもない。


「う..うん」


曖昧に頷いて答え、最後の一口をストローですすった。