佐野さんが車で出社しているのは知っていたから、頼んで正解だった。



「佐野さんの、おかげです」


頭を下げるとぽんっと手が頭に乗る。



「君はすごいね」



いきなりきた言葉に何の事が分からずつい首を傾げると小さく笑って続けた。



「だって見ず知らずの他人の子供の面倒を見て、しかも熱を出されても君は冷静に動いててさ」

「冷静、なんかじゃないですよ」


あの時のユウキ君の顔と“かあさん”と呼んだ声が


幼い頃のあたし自身と重なって。


それで助けたいって思ったんだ。


...なんてただの自己満足、かもしれないけれど。


「そんな大したこと、してないですよ」


そう答えたのに、佐野さんはあたしの頭から手を動かそうとしないで、それから撫で撫でと優しく撫でてくれた。


「佐野さ」


「加賀見!!」