甘くて切なくて、愛おしくて




佐野さんの明るい声が耳に響く。


「どうしたんですか、何か仕事上でミスでも..」


「あ、ミスではないんだけど。加賀見さんが持って帰った資料に誤りが発生したんだ。それで新しいものを持ってきたんだけれど。ほら、君朝一番に先方に行くだろ?」


「わざわざありがとうございます、助かります!」


「それで今君のマンションの前にいるんだけれども」


「えっと..」

そっか、ここの家から鍵を開けてもらうのは悪いし、かといってユウキ君を一人にも出来ないし..


「あの、佐野さん」


そこまで言ったその時だった


バタンと大きな音が聞こえてその方向に視線を向ける。


ユウキ君、何かあったのかな、

「すみません、ちょっと失礼します」

「あ、ちょっと」

佐野さんの電話を切ってユウキ君の部屋に向かった。