甘くて切なくて、愛おしくて




佐野さんが満面の笑みでこちらにやってくる。



「あ、お疲れ様です」


「この後一緒に食事でもどうかな?俺もあと1時間すれば仕事が終わるし」


「あ、っとすみません、今日はこれから用事があって..」


「なに、デート?」



“デート”その響きに胸がどきんと高鳴る。



「そ、そんなんじゃない、ですただ..」


何て言えばいいんだろう?あたふたしてるあたしに助け舟を出してくれたのは美香子だった。


「蝶はこれから大事な大事な用事なんですよ、デートよりも大事な、ね」


悪戯っぽい顔でこちらをみる。


ったくもう、面白がって!


「そ、そうなんです、とにかくお食事はまた今度、ではお先に失礼します!」


これ以上質問されるのが嫌で佐野さんの言葉も待たずにダッシュで出た。