「ったく鍵を二つまとめて付けるようなヤツに言われたくねぇ」
少しだけ軽口を叩きながら加賀見の頭をくしゃくちゃと乱暴に撫でる。
「あーせっかく今日の髪型成功したのにっ!」
「どーせ帰って風呂入って寝るだけだろーが」
「ご飯、忘れてますよ」
「うるせー」
いろんな疑問が浮かんでは消えて行く。
加賀見の泣きそうな顔の理由とか、今日の事とか、それから俺とユウキの事とか。
だけれども今、こいつのおかげで少しだけ心が軽くなった気がする。
絶対に口にはださねぇけど。
“わすれないで..わたしの、こと”
あぁ、分かってる。
最後に浮かんだあいつの顔を思い出しながらくすぐったがりながらも心地いい顔をする加賀見を俺は暫くの間見ていた。


