「わかるよ、その気持ち……」


少年は、静かに口を開いた。


「僕も、親を失ったから……」


少年が、感情を押し殺す理由。

それは、あの夫妻の前で寂しさを見せたなら、今よりもっと酷い仕打ちを受けるからだった。


「あなたも、お母様いないの?」


自分を見詰める少女に、少年はうなずく。


「僕の場合、両親だけどね……」


そう言って、街の方に目を向けた。


「僕の父さんは傭兵だったんだ」

「傭兵?」

「うん……でも、僕が1歳のときに戦死して……」


少年は目を細める。


「1人残された母さんは、僕を育てるために、必死で働いて……」


そして、うつむき静かに頭を振る。


「僕が7歳のときに、過労で亡くなった」

「そんな……」

「後に残されたのは、多額の借金でさ……」


そこまで言って、少年は自嘲気味な笑みを浮かべた。


「絵に描いたような話でしょ?」

「そんなことは……」


困惑する少女を横目に、少年は腰を下ろす。


「今は叔父叔母の所にいるけど……いつかその家は出るつもりだから」


いつまでも、あの地獄の中にはいられない。

だが、1人で生きるには金が必要だ。

そのため、スリ取った財布を渡す前に、金貨を抜き取っていたのだった。


「そういえば、この国の王も昔は傭兵だったんだよね」

「え、ええ……」

「同じ傭兵でもさ……こんなに差がつくんだね」


少年は笑う。


「僕に残されたのは、この白い羽の首飾りだけ……」


そう言って、首から下げた首飾りを取り出した。