少女は、少年を腕を引っ張った。


「ちょっと立ってみて!」

「な、なんだよ?」

「いいから!」


強引な少女の前に、少年は仕方なしに立ち上がる。


「……立ったけど?」

「気をつけして!」


そう言いながら、少女は少年の正面に立った。

そして、自分の頭の天辺に手を当てる。

その手を水平に動かし……


「……ほら! 私の方が背が高い!」

「う、うるさいな!」


気にしていることを言われ、少年は真っ赤になった。


「これで年上とか言われても……」

「こ、これから伸びるんだよ!」


反論しながら、背比べから逃れるかのようにその場に座り込む。


「それに、高いって言っても、ほんの少しじゃないか……」


唇を尖らせる少年。

少年の日々の食事を考えると、背が低くても仕方がないことだ。

明らかに、栄養不足である。

しかし……


2歳も下の少女に負けた!


それが、少年には許せなかった。


「お前、もう帰れよ!」


様々な想いが渦巻き、思わず口調が強くなる。


「わぁ、ここからでも、お城が見えるのね」

「お前……絶対、話聞いてないだろ……」


明るく響く声に、少年はがっくりと肩を落とした。

少女は風に吹かれながら、いつまでも無邪気な笑顔を見せていた。