表現する気持ち

スッと彼女の目が細められた。

「わたし…丈夫になりたいんです」

「お体が弱いのですか?」

「ええ…。生まれ付き、心臓に持病があって…。普通に元気には生きられないんです」

「それはそれは」

「だから、普通に生きてみたい」

その声は消え入りそうなぐらい小さかったものの、強い意志がこもっていた。

「―かしこまりました。少々お待ちください」

青年は踵を返すと、品物を置いている棚から何かを取り、戻って来た。

「お客様にはこちらが良いかと思われます」

そう言って差し出してきたのは、1つのネックレスだった。

金の鎖に、ハート型のクリスタルが付いている。

「可愛いですね」

「喜んでいただけて嬉しいです。どうぞお手に取って見てください」

青年から手渡され、彼女はネックレスを手にした。

よく見ると鎖は編みこまれており、ハートのクリスタルも、中に小さなハート型の赤い石がある。

「あの、この赤い石は何ですか?」

「それもパワーストーンなんですよ。それを身に付けていれば、お客様は元気になれます」

「はあ…」

パワーストーンはいくつか持っていた。

けれどそれも物は試しという気持ちだった。