ネックレスを服の下から出し、ぎゅっと握った。

赤いハート型の石は、買った時よりも美しく輝いていた。

「わたしにはコレさえあれば、充分」

そう思っているハズなのに、どこか心が満たされない。

ぐっと歯を食いしばった。

閉じたまぶたの裏には、自分を気味悪そうに見ている周囲の人間達の姿が、浮かんでは消える。

「何よ…。何でそんな眼で、わたしを見るのよ…!」

じわじわと、暗い感情が心を満たしていく。

それと同時に、赤い石が光り輝きだす。

「わたしは…悪くない! わたしは何にも悪いことはしていない!」

石の光は彼女の手からもれ出し、周囲を赤く染める。

しかし眼を閉じている彼女は気付かない。

「何よ何よっ! 全部消えてよっ!」

彼女は耐え切れなくなり、地面を蹴った。

すると…。

ピシビシっ 

建物にヒビが入っていく。

やがて地面にまでヒビが入り、建物は崩れ始めた。

「っ!?」

彼女が気付いて動くのには、数瞬ほど遅かった。

崩れていく建物に、彼女の体は飲み込まれていった。

彼女の体と共に、赤い光も落ちていった。