「…そうか。頑張れよ」
凪が立ち上がると、秀も立ち上がった。
2人は目をあわせると、別の方向へ進んだ。

「ねぇ、今度キャンプに行かない?」
「キャンプ?」
放課後の教室で、葵と藍が話していた。

「そう、キャンプ!葵、沖縄行かないんでしょ?
だったらせめて、違うところで思い出作ろうよ♪」
「いくらかかるの?」
「凪の家がキャンプ場をひらいてるんだ!」
ーあぁ、そういうこと。
「凪先輩も誘うってこと?」
「あ、うん…良い?」
最初からソレが狙いだったのだろうと、葵は少し後ろめたい気分になった。
男一瞬ダチ一生なんていうが、恋愛絶頂期の子にとっては、むしろ逆だと思う。

「いいけど3人って…メンバーが」
「そうなんだよねー。そこで考えたんだけど、是永も誘うってのはどうかな?」
「…あー。別にいいけど、何でアイツ?」
「だって、葵と仲良いでしょ!?ソレにあの人…(たぶん…)」
「?」
「凪に連絡してみる」

藍は携帯をいじりながら言った。

凪先輩宛てのメール…。
あたしなんて、メアドすら持ってない。
ふと藍の目線が、あたしの後ろに向いた。
藍は驚いた顔で彼の名前を呼ぶ。

「凪ー!!」
凪先輩は、何してるの?と藍に声をかけ、
彼女の頭についていたゴミをさらっととった。
ーあぁ、酷く心が痛む。

「…てことなんだけど、いい?」
「あーいいよ。是永は大丈夫なの?」
「明日聞いてみる!メアド持ってないから」

その次の瞬間、凪先輩は左にいたあたしを見た。
心臓がドクンと跳ねた…。