ツーンと唇を尖らせてそっぽを向くと、シロは穏やかな声で「美愛子」と呼んだ。 …この世で唯一、彼にしか許されていない呼び方。 意地っ張りな黒猫は、「なぁに」と返事をする。 「拗ねないでよ。せっかくの初デートなんだし、ね?」 そう言って、彼は私の大好きな笑顔を見せるから。 「…調子いいんだから、もう」 私達は手を繋いで、歩き始めた。 ……まっしろで、ときどき意地悪な。 王子様に、今日も私は恋をしている。 Fin.