好きなんです

「早くしろ」

絶対に嫌。

こんなにいじめられて・・・。

さらにいじめられるなんて絶対に嫌!

「あれ?佳苗先輩・・・」

この声って・・・。

「あ・・・あら、新じゃん?」

やっぱり新だ。

「何してんスか?」

「え?和佳奈ちゃんと話してただけよ?」

「だって、髪の毛掴んで・・・」

「あぁ。これね?結んであげようと思って」

「え・・・?」

新は、首をかしげる。

どう見たってそうには、見えない。

「あ。そうだった。これ・・・」

新が『和佳奈』と書いてある上履きを渡した。

新が寄ってきてくれたおかげで先輩たちが手を離す。

「トイレにあった。男子トイレに」

あ・・・。

探してないとこだ。

さすがに、男子トイレまでは、探せなかったから・・・。

「あり・・・がと・・・ぅ」

和佳奈は、小さくお礼をした。

佳苗先輩の視線が痛い。

「あ。うちら帰っとく!じゃぁね佳苗!」

莉央先輩と菜々美先輩が走って逃げていった。

佳苗先輩が小さく舌打ちしたのが和佳奈には、聞こえた。

「・・・」

みんなは、黙る。

「・・・あの」

真っ先に新が口を開いた。

「佳苗先輩って・・・。和佳奈のこといじめてませんか?」

「え・・・!!」

和佳奈は、新が言った一言に驚いて声を出してしまった。

「・・・。あ・・・新は、そんな風に見てたんだ・・・。あたしのこと・・・」

佳苗先輩が泣き崩れる。

でも、きっと嘘泣きだと和佳奈は、悟った。

「あはは。そんな訳ないじゃん。和佳奈が泣いてたのは、佳苗先輩が髪結んでくれるって行ったから感激しちゃってw」

涙を拭きながら立つ。

「そうなのよ。あたしもビックリしちゃった!」

佳苗先輩は、いつの間にか泣き止んでいる。

「なんだ・・・。そうだったのか・・・」

新がうつむく。

「すいませんでした!」

そう言って新は、走って行った。