雨色の宮

「陽子、三つ編みにしてみようか取り敢えず左側に一本だけ」
 言い終わらないうちに、手早く編み始める。私の答えはもちろんイエスなので返答は不要だ。でも、
「はい、月乃さんのお望みのままに」
 そう答えておいた。

 この白の宮に響く音が、いつの間にか月乃さんの音と雨の音から、私の音と月乃さんの音に替わっていた。

 しばらくして、外に出ると、まだちょっとだけ小さな滴が落ち続けていた。
「陽子、傘無いから入れて~」
 私の青色の傘に月乃さんが私の左側に入り込んでくる。月乃さんの勢いで、私の三つ編みと、その先に結ばれた水色の蝶が揺れる。
私の髪を編み終わった後、月乃さんが自分が身に付けていたリボンを外して結んでくれた。
「今日は三つ編みとリボンまで、ありがとうございます」
「いやいや~良いよ。陽子の髪は綺麗だから何色でも似合う」
 月乃さんがそういうので私も、
「月乃さんの髪だって凄い綺麗ですよ、今日もらったやつと同じ亜麻色」
 そう言ってみたら、
「え、あ、そう、あ、ありがと…」
 珍しく、あたふたして、ちょっと紅くなって俯いていた。いつもとちょっと違う感じでとても愛らしいのだけど、おかげで何だかクロス歩道橋の分かれ道まで無言になってしまった。いつもとそう変わらないやり取りなんだけど、何でか今日に限っては妙に照れくさい。私までまた月乃さんと同じ顔色になってしまった。昇降口で、私も月乃さんもまた戴き物がしこたま増えた。
タイミングが良いのか悪いのか、分かれ道の所で雨は無事に上がった。
この時期にしては珍しく、雨上がりに直ぐ晴れ間が見え始めている。空の色は既に青から藍に変化している。
「雨、上がっちゃったね。ありがとう、陽子」
 月乃さんは、いつもの調子に戻って私の好きな、いつもの笑顔を向けてくれた。
「じゃあね、また明日」
「はい、また明日です」
 いつものように、その後ろ姿が見えなくなるまで見送った。
空にはもう、灯が点り始める。明日は良い天気になりそうな気がする。

 家に帰って、月乃さんのものを開けてみると茶色い粉の付いた、丸っこいものがいくつも入っていた。
こういうのも作れちゃうし、本当に月乃さんは器用で何でも出来る人なんだな。
器用、で手提げ袋を思い出す。何をお返ししたら良いか、今度月乃さんに相談してみようかな。