余程、さっきの手作りチョコが心にのしかかっているらしい。
私は、ムダになるかもしれないチョコを作るだろうか。
作らない。
傷ついてでも作って渡そうとする彼女たちは本当にすごい。
だけど、どうしてそこまで勇気を出して作ったチョコを他人に渡してしまえるのだろう。
自分で食べるのは虚しい?
でも、覚悟していたことでしょ?
「祥子、祥子」
お母さんが私を呼ぶ。
「あんた、仂くんにあげたの?」
「何を?」
「チョコレートよ。もうあげたの?」
「あげてないよ」
「あら、じゃあ今あげなさいよ。お母さん用事済ませてくるから」
お母さんは自分の部屋へと退場していった。
仂は私をじっと見てくる。
「さっきのチョコ、おれが食ってやる」
何様だこいつは。
「いいでしょ、お母さんの食べたんだから」
彼女の勇気をどうして簡単にこいつにあげられよう。
「そんなに好きだったの」
「ちがうったら。あんたに関係ないでしょバカ」
「いつまでも未練がましく持ってたって仕方ないだろ!」
しばらく睨み合っていたら、お母さんが驚いた顔をしてた。
「なにやってんの。今日はそんな日じゃないでしょ」
「今日ってどんな日? みんなが仲良くしなきゃならない日?」
「おばさん、おれ帰ります」
私の横を、仂はコートを抱えて過ぎ去った。
「仂くん、まぁ」
お母さんは後を追って見送りに行った。
そしてすぐに部屋に閉じこもった私のところに、見送り終えたお母さんがやってくる。
「せっかく来てくれたのに、何してるのよ」
「来てくれた? お母さんにとってはね。あたしにしたらいい迷惑」
「どうしたのよ。毎年チョコあげてたでしょ」
「去年からあげないことにした」
「あらあら。それじゃあ仂くん怒るわね」
「怒る? 自分はたくさんもらってるんだしいいじゃない。あたしは今まで作らされてたんだよ? いい加減解放されたっていいでしょ」
「でも、」
お母さんは私のベッドに座って、私の顔を覗き込んだ。
「それでも、もらってくれる人がいるって、幸せなことよ?」


