こうも近いと本当に兄貴風を吹かされてうっとうしい。

「笑わねーから」

言ってみ。

やだね。

なんならベーグルは笹本にゆずるか。

好きな奴にコクったの。

「ほう‥」

しまった! つい言ってしまった!

おれはあきらめて、この人なら何かプラスなことを言ってくれるんじゃないかと開き直った。

「今だに好きと言ってくれないが一応付き合っているらしい。けどメールもあまり来ない。けど前より進歩してると思う」

「それ付き合ってないだろ。」

「いや、あいつ照れ屋だから言えないだけなんだ。一応、おれのキモチは受けとめてくれてる、と思う」

「思うって、確かめろよ」

「つったって、なんか、訊きづれーし」

「その子、地元の子か」

「幼なじみ。だから、会いたくても会えないわけ。おまけにおれ忙しいから帰れない。」

「そりゃおまえの誠意が足りねーな。忙しくても朝起きたときくらい電話できるだろ、早起き得意なおまえなら」

「あいつが起きてねーから」

「馬鹿。起こすためにモーニングコールがあるわけ」

「――おれさ、今まであいつにわがまま言って従わせてきたから、あんまり自分中心すぎると嫌われる確率高いんだよね」

千さんはため息をよこした。

「そんな俺様ヤローがいきなり一歩引いたんじゃ、それに慣れてた子は逆に困るんでないかね」

「うそ」

「さぁな。少し押してみな。向こうはびくびくして待ってんだ。やさしく押してみな」