インターフォンの画面には誰も映っておらず、


「宅急便でーす」


と言われたので、開けた。


が――


「お邪魔します」


メガネをかけた、黒髪の男性が侵入してきた。


2日前に会った男。


「あ、あく……ま」


怯える私に構わず、お邪魔します、と彼は上がった。


私は嫌々、奥に通す。

ママが寝転んでいたリビングに着くと、彼女に「お客様」と声をかけた。


私の横の男性を見て、ママは飛び起きた。


「あ、あら、ごめんなさい!し、失礼ですが、どなたかしら?」


「藤堂篤志と申します。はじめまして、奥様」


――お、奥様?


物腰柔らかく、手を差し出し、ママはまたマリアになりきったかのように、ポーッとしながら、握手を交わす。