死刑囚と犬

「犬の様子がおかしいんだ!

医者を呼んでくれ」


やがてガチャリとのぞき窓が開き
部屋の中をのぞく看守の目が見えた。



男はのぞき窓に詰め寄り
看守に向かって叫ぶ。


「医者を呼べ!早く!」


看守は鋭い目を
男に向け


無言でうなずきのぞき窓を閉めた。


ララはうずくまって
震えるばかり。


男はここに来て初めて
途方もない時間の長さと

言う奴に気が付いた。


待つということの
時間の長さ。


男は医者の到着を
じっと待つ男。