【完】君しかいらない

ドキドキ、バクバク……。


男の子は女の子の背中を押して、先にエレベーターから降ろし、あたしに流し目を送ってくる。


そしてエレベーターを降りる間際に、あたしに顔を寄せて


……そっと、囁いてきた。






……きゃっ!


色気漂うただならぬ雰囲気に、あたしは完全に身動きがとれなくなってしまった。


何されるのかわからなくて、とっさに目をつぶってると……。







「……今日はヤキニク臭くないんだ?」


……って。


……え?


ええーっ!?





ギョッとしてるあたしを置いて、男の子は、何もなかったようにエレベーターを降りて行った。