【完】君しかいらない

サクサクと、静かに歩く音がしばらく続く。


そのうち民家の明かりが見えてきて、道も開けてきた。


途中でいくつか別の道があったからか、いつの間にか後ろに黒田くんはいなくなっていて、気がつけばあたしは安元くんと、二人っきりになっていた。






「…けど、もう今わかってもしょーがねぇし。春奈は、兄貴のとこに行ったから」


「それが…春奈に置いて行かれたってこと?」


「そ。兄貴を奪いに行くって、俺に言い切って走ってった。人ってさ、究極の選択のとこまで来ると、やたら決断力つくのな。…ま、目ぇ覚ませっつったのは俺の方だし?まぁ、後悔はしてねーな」


春奈が…奪いに行くって、言ったんだ。


婚約するって聞いたら、もう後がないもんね。


安元くんは淡々と話してるけど、本当に後悔してないの?


「安元くんは…それでよかったの?」


あたしがそう言うと、安元くんはフゥと軽くため息をついた。


「…俺なんか、いつもそーいう役回りだし?」