【完】君しかいらない

「森さんのところの息子さん、今朝も女の子と家から出てきたらしいわよ?」


「いやねぇ……。うちの子同じ学年なのよね。悪い影響出ないか、心配だわー」


「本当にね……。まぁ、親が親だから、あぁなるのかもしれないけど」


うわぁ、聞いちゃいけない主婦の会話!?


思わず身構えてしまうけど、安元くんは平然としていた。


そしておばさんの横を素通りし、エレベーターの上ボタンを押す。


それに気付いたおばさんたちは、ハッとして会話を止めた。


無視するのかなと思ったけど、安元くんは、黙ったまま軽く会釈をしていた。


あたしもとりあえず、頭を下げた。