【完】君しかいらない

「…………」




「もし……あのとき、お前が奏太に会わずにまっすぐ帰って来てたら……」




――トク、トク、トクと鼓動が早くなる。











「って……やめようぜ、こんな話」




「どうして……どうして、安元くんはあのときあたしに行かせたの?」




「その方が、自然だって思ったから。小中は、奏太といる方がいーんだよ」




「そんなこと、安元くんが決めないで……あたし……」




「実際に、今…奏太といて、幸せなんだろ?だったら…迷うな。

俺たちは…なにも、間違ってないんだよ。ゴメンな…惑わせて」




「安元くん……」




「奏太なら…間違いないから。だってさ…今のお前、前よりすごくいい顔してる。

それって、奏太の効果だろ?」




「う…うん……」




「俺には、お前を毎日笑顔にさせるとか、できねーし。泣かせてばっかかも」




「イジワルだもんね…」




「そ。イジワルで、他人の気持ちを考えられないヒドいヤツ…」




「あたし、そこまで言ってないよ?」




「アハハ、そーだな。とにかく…ずっと、お前を見てきたのは……奏太だから。俺はいつも、なにもかもが…遅いんだよ……」




「遅いって……?」




「気付くのが、遅い。好きになったヤツには、いつも本命がいて。俺は手遅れになってから、気が付く」




「そんなこと……」




それは、あたしだってそう。




手遅れになってから……。