【完】君しかいらない

「ホラ…だから、ヤだったんだって……愛梨ちゃんに会ったら…弱虫の俺が出てくる……」



「奏太くん……」



「もう……行けって。引き止めてゴメン……これ以上、情けないところ見せたくないから…」



奏太くんは俯いたまま、あたしの体を軽く押した。



よろけそうになりながらも、なんとか踏ん張る。










小さい頃も、そうだった。



奏太くんはいつも大丈夫だよって、頑張るフリをする。



なにか辛い気持ちを抱えていても、



必死でそれを隠そうとする…。



「あたし……行かないよ」



壊れ物に触るように、



奏太くんを、そっと抱きしめる。



今ここで奏太くんをひとりにしちゃ、



絶対にいけないような気がした。







「なんでだよ……俺、もう…前みたいに、愛梨ちゃんといる資格なんかないし……汚れたから」



「汚れたって、奏太くんは奏太くんでしょ?あたしは、本当の奏太くんのことを、知ってるよ……」



「俺、愛梨ちゃんには言えないこと、いっぱいやったんだよ……だから、もう……」



「もう、なにも言わなくていいよ……あたし、どんな奏太くんも、受け入れる…。

あたしのために……ゴメンね。ホントにありがとう…」



あたしは……



奏太くんがひとりでたたかっているときに、



この一年半で、



数え切れない宝物を得ることができた。



だから今からそれを、



少しずつ奏太くんにもわけてあげたいんだ。




最悪な状況の中でも、



楽しいことはきっとあるし、



未来は、希望はきっとあるって、



伝えたい。