もし、老馬の声を聞き分けるモノが、この場にあったのなら。


 馬は『リョウ!』と叫んでいたかもしれない。


 長かった、会えない時間を埋めるかのように。


 一人と一匹は、お互い、我を忘れて駆け寄った。


 そして、昔『烈火のリョウ』と呼ばれ。


 老馬の騎手だった男は、愛しそうに、馬の鼻面を抱いてささやいた。


「やっと会えたな、ストラップスター!

 お前、小春との初戦で優勝してからすげーんだもん。

 俺は、お前が、いつでもここに来られるようにしてたのに。

 お前を引き取るには、値段が高くなりすぎて、もう無理かと思ってた……!」



 ぶるるるっ!



 まるで、男の話しが判るかのように。


 誇らしそうに、鼻を鳴らした、ストラップスターに、笑って、リョウは、言った。