ある晴れた日。


 かなり、年をとり。


 もう、誰も。


 どんな軽い人間でさえも、乗せられないほど、足を痛めた老馬が、牧場に送られて来た。


 若い時に、散々レースに出されてこき使われ。


 一線を退くと、休む暇なく、子種まで絞り尽くされ。


 完全に役立たずとなった彼は、とうとう食肉になりさがるのか、と耳を垂れていたのだが。


 馬専用の運搬車から出たときに、いきなり広がった青空を見て、ワケが判らないと、半分見えなくなった目を、ぱちぱちさせた。


 そして。


 次の瞬間。


 老馬は、喜びに、いなないた。


 なぜなら。


 新しく、彼の馬主になった男が、自分の名前を呼んだからだ。



「ストラップスター!!」