新しい騎手には、腹立つことが、山よりも高くあったが。


 最も悪かったのは、やせっぽちの騎手と組んで、肝心なレースに一勝たりともできなかった事だ。


 今までは、楽々こなしていた走りが出来ねぇ。


 鞭と、たづなでぐるぐる巻きに縛られて。


 勝てるレースに、みすみす負けまくる悔しさが判るか!?


 しかも、一着まであと少しの『惜しい』ってぇ、レベルじゃねぇ。


 バッチリ、しっかり、ケツと、ブービーを争うなんざ、カタツムリ以下じゃねぇか!


 痩せた騎手は、それが。


 俺が足を痛めてできた後遺症だと、ほざきやがったが、もちろん、ちがう!!


 新しいやり方にブチ切れた俺は、とうとう、レースの真っ最中。


 隙を見て、やせっぽちの騎手を振り落とすと、自分勝手に駆けだした。


 すると。


 ……かなりあっさり、三着に入ったんだ。