俺とアイツは、数々のレースを順調に勝ち進み。


 春にやる、でっかいレースに参加することになった。


 サツキショウ、とか言ったか?


 俺達馬にとっては、その価値とかって言うのは、全く判らないが。


 一位になると、莫大な金と名誉が入って来るってんで、人間どもは、やけにピリピリしてた。


 おかげで、俺サマの方は、体調は万全だったけれども。


 俺に乗る騎手の方は、蒼くなってた。


 確か、コイツ。


 他の人間から『烈火のリョウ』とかって呼ばれてたっけ。


 普段は、それこそ炎のように、無神経なほど明るいのに。


 大舞台で、よっぽど緊張しているらしい。