妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~

「信頼・・・・・・というのかな。う~ん、あの性格の悪い男を信頼しているわけではないが・・・・・・。頼りにはしているかな。何だかんだで、頼んだことは、一応ちゃんとしてくれるしな」

「それはお姉さんが、そはや丸の主だからじゃないの? 逆らいたくても、逆らえないでしょ?」

 一応否定的なことを言ってみる。
 呉羽もその場に横になり、ぎゅむ、と烏丸を抱きしめた。

「暖かいなぁ、烏丸は。やっぱり烏丸は、妖でも生き物だな」

 烏丸は大人しく、呉羽の腕の中で目をぱちくりさせる。

「お前は行動するのに、何か不自由か?」

「? ううん」

「そうだろ? 主といっても、私などその程度だよ。私はお前の主でもあるが、別にお前の自由を奪うつもりもない。まぁこれは主によるんだろうが。そはや丸だって同じだよ。私が『これをやれ』と言っても、そのこと自体に力はない。やりたくない、と思えば、無視することだって可能だ。私と共にあらねばならない、という運命にはあるが、実は私の『言葉の命令』など、何の力もないんだよ」

 烏丸は、不思議そうな目で呉羽を見る。
 そんな烏丸に、呉羽は、ふふっと笑いかけた。

「でも、そはや丸は、おいらを助けに来てくれたときも、お姉さんの頼みだからって、あんまり無茶なことはしなかったのよ。まぁ、右丸の前で、ことさらお姉さんとの仲を主張するのは、いつものことだけど」