妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~

「お姉さんはさ、強い男が好きなの? じゃ、貴族なんて全然駄目じゃない」

「そうだな。権力者などに興味はない。大体貴族なんぞ、やたらと顔を白く塗ったり歌ばっかり詠んだり、全く男らしくないじゃないか。もっと荒っぽくても良いんじゃないか」

 ひらひらと手を振り、呉羽はけらけらと笑う。
 烏丸は、ふと顔を上げた。
 ちらりと背を向けているそはや丸を見る。

「・・・・・・お姉さん、お姉さんの好みって、まるでそはや丸じゃない?」

 ぴく、とそはや丸は身体を硬くした。
 今呉羽は、どんな表情をしているのだろう。
 見てみたいが、逆に己の表情は見られたくない。
 自分がどんな顔をしているのかはわからないが、きっと動揺しているのが現れているだろう。

 そはや丸は、ぎゅっと拳を握りしめた。
 呉羽は主だ。
 それ以外の何者でもない、と言い聞かせる。

「そはや丸は強いじゃない。人型のまんまでも、あのおっきな鬼に立ち向かってたよね」

「ああ、でもあれは、高丸の正体を知ってたからってのも、あると思うぞ。そんなこと知らない私からしたら、さっさと刀になってくれないと、こっちの身が危ういから、迷惑なだけだ」

 勝手なんだよなぁ、と笑う呉羽を、なおも烏丸は見つめた。
 迷惑だ、と言うわりに、呉羽は嫌な顔一つしない。

「そはや丸は、ずぅっとお姉さんの相棒だものね。そりゃ信頼もするか・・・・・・」

 諦めたように言い、烏丸はぺたんとその場に蹲った。