妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~

「烏丸! 同じ妖の気を辿り、依り巫女の身に移れ!」

 そはや丸が叫んだ瞬間、押さえつけられている右丸が、びくんと震えた。
 何度か嘔吐(えず)くように大きく背中が波打った後、右丸は大きく口を開く。

 苦しげに顔を歪め、仰け反ろうとする右丸を、そはや丸は無慈悲に押さえつけ、女官の口に右丸の口を押しつけた。
 傍から見たら、まるで右丸が女官を喰らっているようだ。

『んしょ、んしょ』

 烏丸の声がだんだん大きくなり、右丸の痙攣が酷くなる。

「・・・・・・上手くいかねぇな。おい烏丸。道は見えてるか?」

 女官に覆い被さったまま痙攣を続ける右丸に、そはや丸は苛立ちながら声をかけた。

『う~ん・・・・・・、うっすらと。うう、でもなかなか進めないの。右丸、苦しんでるね。早く出なくちゃ・・・・・・』

「右丸なんざ、どうでもいい。焦ってしくじる方が厄介だぜ」

『そはや丸は冷たいなぁ。右丸は良い子なのよ。ちょっと奥手だけど』

「じゃあ、その良い子の右丸のためにも、さっさと出て来い。何をぐずぐずしてるんだ」

 皆が皆、右丸は良い子だと言う。
 思い返してみれば、右丸を悪く言う者はいない。
 確かに良い奴なのだろう。

 だが、やはりそはや丸は憮然とした表情になった。

『ねぇそはや丸。そはや丸は強い妖力があるでしょ。なのに何で、今はこんなちょびっとの妖力しか見えないのかしら。抑えてるの?』

「俺の妖力なんざ、そのまま使えばえらいことになるぜ。俺が直接お前を引き出したら、右丸から出た瞬間に、お前は俺に取り込まれるしな」

 ひぇ、と烏丸が息を呑んだ。