小さな弱い灯に照らされたそはや丸は、女官が見たこともないような顔立ちだ。
 あまりの粗暴さに全く気づかなかったが、今のように静かにしていれば、なかなかな男っぷりに見える。

 身のこなしに優雅さはないが、隙のない野生動物のように研ぎ澄まされた感じを受ける。
 切れ長の目に光る瞳は、闇そのもののようで、見つめられると吸い込まれそうな、妖しげな美しさ。

 そう思い、女官はじっとそはや丸を見た。
 全体的に、そはや丸は、どこか妖しげな魅力があるのだ。

「急ぐぜ。これ以上遅くなったら、あんただけでも屋敷に入るのに手間取りそうだ」

 ふい、と目を逸らし、そはや丸は再び歩き出す。
 女官は我に返り、また慌ててそはや丸の後を追った。


 蓮台野の入り口では、相変わらず雑色たちがおろおろと、そこら辺をうろついている。
 女官の姿を認めると、安堵の息をつきながら駆け寄ってきた。

「ああ、ほたる様。ご無事で」

 心からの言葉なのだろうが、女官はそんな雑色たちをぴしゃりとはね除ける。

「お黙りなさい。全く役に立たない者どもなのだから。今更安心されても、嬉しくもありません」

 じろりと雑色らを睨み、女官はさっさと牛車の前の台に足をかける。
 そこでふと、そはや丸のことを思い出し、女官は牛車に入りながら振り向いた。

「このお方は、外法師様から遣わされたお方ですから・・・・・・」

 言いながら、女官は固まった。
 先程まで傍にいたそはや丸の姿がない。
 雑色らも、一様に訝しげな顔で女官を見ている。