妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~

 左大臣家ともなれば、もっと高級な、それこそちゃんとした陰陽寮に属した陰陽師を抱えているはずだ。
 もっともそのような高等な者を、牛飼い童風情に遣わしてくれるかどうかはわからないが。

「寅の刻あたりを過ぎた頃からかと思います。急に苦しみだして。以前から、身体が痛いと言っているのは聞いたことがあります。熱があるわけではありませんが、尋常ではない苦しみようで。慌てて薬師を呼ぼうとしましたところ、右丸が呉羽様を呼んだので」

「ほおおぉ。そんな状態でも、呉羽を呼ぶか」

 にやにやと笑うそはや丸とは違い、横で呉羽は難しい顔をした。

「私を呼んだのは、右丸自身か・・・・・・」

「何だか右丸ぽくない喋り方ではありましたが」

 烏丸だな、と呉羽は悟った。

 女官が呉羽のところの来ようにも、以前から居場所を聞いていなければ、その苦しんでいる右丸から聞き出さねばならない。
 居場所がわかったところで、寅の刻などに来られる場所でもないだろう。

 急いできて、今になったということだろうか。
 周りがもたついているから、痺れを切らせた烏丸が早暁に念を飛ばしたといったところか。

「ふ~ん。寅の刻に倒れたのなら、ここに辿り着くまでに、えらい時間がかかっておりますな」

 すでに日が暮れかかっているのだ。
 丸半日、放っておかれている状態ではないか。