妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~

「右丸がぶっ倒れたのぁ、病じゃねぇよ」

 不意に声がし、簀の子からそはや丸が現れた。
 本当はその辺に転がっていたのだろうが、一応気を遣って人間らしい登場の仕方をしたらしい。

 だが女官は、目を大きく開いて腰を浮かす。
 今にも逃げ出しそうな体勢だ。

 それも道理。
 この時代、女子は女官であっても、おいそれと男子に顔は見せない。

 絶句している女官を尻目に、そはや丸は部屋に入ると、どっかと呉羽の横に腰を下ろした。

「あんたが右丸に、呉羽を呼ぶよう頼まれたのかい」

 そはや丸に正面から見据えられ、女官は慌てて帯に挟んだ扇を開いて顔を隠す。
 そして、ちら、と呉羽を見た。

「ああ、えっと。これは私の相棒です」

 呉羽の言葉に、女官の目は再びそはや丸へ。
 しかし、やはり困ったように、視線は呉羽に戻ってしまう。

 そはや丸が怖いのだろうか、と思い、呉羽はそはや丸の質問を引き継いだ。

「え~っと、そうそう。右丸の状態は? 何故倒れたからといって、いきなり私のところに? 右丸が、私を呼ぶように言ったのですか?」