「呉羽様は、このようなところに、お一人で?」
気を紛らわせるためか、女官は呉羽に話しかけた。
「一人と言うか・・・・・・。まぁ一人と言えば一人ですが」
そはや丸を『一人』と数えて良いものか、呉羽は悩みつつ答える。
刀だから、そはや丸も『一振り』と数えるのだろうか、などと考えているうちに、屋敷が見えてきた。
荒れ果てたあばら屋や、朽ちたお堂などでなく、それなりにちゃんとした建物に、女官は安堵の息をつく。
といっても、寝殿造りの寝殿しかない感じだ。
呉羽は厨には回らず、直接階(きざはし)を上がって簀の子に入った。
素早く部屋の中を見回し、女官を手招きする。
「どうぞ、お上がりください」
辺りを物珍しそうに眺めていた女官は、呉羽の言葉を受けて、そそくさと階を上がった。
呉羽は円座を用意し、自身は板の間に直接座る。
「早速ですが、左大臣様には過去一度お会いしただけで、これといって交流があるわけではありませんよ。それも結構前のことですし、一体何故今更わたくしなどのところにご使者が?」
部屋に入ってからも、終始きょろきょろしていた女官が、はっとしたように姿勢を正した。
「ええ、わたくしも、さすがにこのようなことで頼長様のお手を煩わすようなことは、しておりません。あなた様のことは、前々から存じておりました」
呉羽は怪訝な表情で、女官を見る。
前々から知っていたとは言うものの、呉羽には覚えがない。
気を紛らわせるためか、女官は呉羽に話しかけた。
「一人と言うか・・・・・・。まぁ一人と言えば一人ですが」
そはや丸を『一人』と数えて良いものか、呉羽は悩みつつ答える。
刀だから、そはや丸も『一振り』と数えるのだろうか、などと考えているうちに、屋敷が見えてきた。
荒れ果てたあばら屋や、朽ちたお堂などでなく、それなりにちゃんとした建物に、女官は安堵の息をつく。
といっても、寝殿造りの寝殿しかない感じだ。
呉羽は厨には回らず、直接階(きざはし)を上がって簀の子に入った。
素早く部屋の中を見回し、女官を手招きする。
「どうぞ、お上がりください」
辺りを物珍しそうに眺めていた女官は、呉羽の言葉を受けて、そそくさと階を上がった。
呉羽は円座を用意し、自身は板の間に直接座る。
「早速ですが、左大臣様には過去一度お会いしただけで、これといって交流があるわけではありませんよ。それも結構前のことですし、一体何故今更わたくしなどのところにご使者が?」
部屋に入ってからも、終始きょろきょろしていた女官が、はっとしたように姿勢を正した。
「ええ、わたくしも、さすがにこのようなことで頼長様のお手を煩わすようなことは、しておりません。あなた様のことは、前々から存じておりました」
呉羽は怪訝な表情で、女官を見る。
前々から知っていたとは言うものの、呉羽には覚えがない。


