東三条邸の端っこ、車宿りの辺りで、この屋敷の主・藤原 頼長に仕える牛飼い童・右丸(うまる)は、辺りの掃除をしながら、ぼんやりと北のほうを眺めた。

「呉羽(くれは)様は、どうしているかなぁ」

 ぽつりと呟き、彼は数ヶ月前に会った外法師の少女を想った。