「その日から、私は毎日この場所へ訪れました。彼に会うために。
彼と過ごす時間は、私にとってとても楽しい一時でした。
彼も、私と同じ気持ちだと言ってくれました。私はそれが嬉しいと思う反面、何とも言い表し難い、罪悪感にも似た思いがあることも分かっていました。
 
でも、私には、狩野に対する想いに目を背けることは出来ませんでした。
 
でも、彼の様子が変わってきたのはそれからでした。
彼はいわゆる芸術家肌の人だったから、一旦自分の世界に入ってしまうと二日や三日は何も喋らないということが度々ありました」