「そして、桜を見上げていた私に声をかけてきたんです。僕の絵のモデルになってくれないか、と。
もちろん、最初は断りました。見ず知らずの男にいきなりそんなことを言われても迷惑だったし、モデルなんかをやるほどもう若くはなかったので。
 
しかし、こっちが驚くほどの熱心さで頭を下げているので、どういう気まぐれか、私はその話を承諾したのです。
 
あの時の笑顔は忘れられません。そして、その笑顔に多分私は惹かれたのでしょう」