でも、平気と思っていても、やっぱり旅立ちが近づけば、寂しくなる。 明朝、旅立つ前に、まことが見せた甘い雫。 あたしは、その蜜を口にはしなかった。 今それを味わえば、きっとまことの脱け殻を抱いて、ほおを濡らすことになる。 本当は会いたかったよ。 …本当は、抱きしめて欲しかった。 「5分で良いから」 すがりつくようにして、電話越しで必死にささやかれた声。 …ずるいよ、居なくなるくせに。