『俺のこと、よぉ見てるやろ?』
中学に入学してから1ヶ月も経たない頃、初めて健太郎に声をかけられた。
『え?』
『好きなん?俺のこと』
“問題児”と言われている男子が隣の席で、確かにジロジロ見ていたのかもしれない。
突然…イビキが止まったから、なんとなく目を向けた。
すると、彼は…こっちを見ている。
『違っ…』
『付き合う?』
数秒前まで寝ていたことを、証明するかのような…赤い瞳。
彼は腕の上にうつぶせ、その隙間から顔を覗かせて、微笑んでいる。
『…好きちゃうし』
第一印象は、思いこみが激しい男。


『なんで、無視するん?』
『他の男には笑うくせに、なんで俺には笑ってくれへんの?』
それから数週間、彼はふてくされた表情でよく話しかけてくる。
『…嫌いやもん』
何かと突っかかってくる彼に、正直…ドキドキはしていた。
この頃から、周りは笠井健太郎と井上沙代を、特別な関係として…見始める。